さんかく色のつみき

数学は、深くて、楽しい。

消える円

概要

 初めてのブログなので自己紹介、それから三角形と円に関する小さな話を書きます。図形(高校数学では数学A)の話です。

 

見えない何かが見える楽しさ

 はじめまして。さんかく色といいます。

 数学が好きで、学校を卒業した後も、仕事に就いた後も、子供が生まれた後も、

 何か気づいたことがあれば、数学しています。

 最近はパデ近似の勉強をしていまして、数の無理数性や超越数などに興味があります。でもこのブログでは、あまり専門的なことよりも、手近な数学の話を書こうと考えています。

 

 さて、私の息子が小さいころ積み木遊びをしているとき、「パパ そこの さんかく色の積み木とって」と言われたことがあります。彼には「青い三角柱の積み木」が「さんかく色の積み木」に見えたんですね。無邪気な表現に感激したのを覚えています。

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これが「さんかく色のつみき」です。

 数学も、普段とはちょっと違う見方をするだけで、おもしろい発見がたくさんできます。このブログでは、そうした自分が見つけた「小さな再発見」(それはもちろん過去に、世界のだれかが、すでに発見したことです)を書き留めていきたいと思います。

 自己紹介で終わるのもつまらないので、さんかくに関する話をひとつ。

 消える円

 サム・ロイド*1が考案した「消える妖精」(とか「消えるインディアン」)というパズルがあります。

 紙をずらすと妖精が一人消えてしまうパズルです。

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15人の妖精が…

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14人になっちゃった!

 今日はそれの図形版、その名も「消える円」をやってみましょう。(ネーミングセンス0)

 

 まず、〈平面上に一直線上にない3点が与えられれば、その3点を通る円はひとつ決まる〉ことを確認しておきましょう。そのことを踏まえて、次の問題を考えてみてください。

問題A

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 上の三角形ABCは鋭角三角形です。点D、Eはそれぞれ辺BC、CA上の点であり、直線AD、BEの交点をFとします。ただし、∠ADC、∠BECは直角ではありません。
 6個の点A~Fの中から3点を選んで、その3点を通る円を描くとき、円はいくつ描けますか?

  …これは図形の問題に見せかけて、ほとんど組合せの問題です。

 解いてみましょう。異なる6点から3点を選ぶ組合せは6C3=20通り。

 でも、この中には3点が一直線上に並んでしまう3点の組(A,F,D)、(B,F,E)、(A,E,C)、(B,D,C)の4通りが含まれますので、それを除いて、円の個数は20-4=16個

 ちなみにその16個の円はこちら!

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ぐちゃぐちゃ!

 

 では、次の問題はどうですか?

問題B

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 設定は問題Aとほとんど同じ。ただし、 ∠ADCと∠BECは直角です。6個の点A~Fの中から3点を選んで、その3点を通る円を描くとき、円はいくつ描けますか?

 …? 答えはさっきと同じ16個でしょ?

 いいえ。描ける円は10個です。

 

 6個の円はどこに消えた!?

 

 問題Aと問題B、見た目はそっくりなのに答えが違うのは、問題Bを解くためには更なる図形の知識が必要だからです。それは「円周角の定理の逆」と(その系の)「四角形が円に内接する条件」です。

円周角の定理の逆4点A,B,P,Qについて、点P,Qが直線ABに関して同じ側にあって∠APB=∠AQBを満たすならば、4点A,B,P,Qは同一円周上にある。

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四角形が円に内接する条件次の(1)、(2)の一方が成り立つ四角形は円に内接する。つまり、四角形の4つの頂点は円に内接する。
 (1) 1組の対角の和が180°
 (2) 1つの内角がその対角の外角に等しい。


 この定理を知っていると、4点A,E,D,Bは「円周角の定理の逆」の仮定を、4点C,E,F,D(を結んでできる四角形)は「四角形が円に内接する条件」の仮定をそれぞれ満たすことがわかります。つまりこれら4点は同一円周上に乗ることが分かるのです。

 ところで、一般に、4点X,Y,Z,Wが同一円周上に乗ると、これら4点のうちから3点を選んで、その3点を通る円を描くと、それらはすべて一致します。実際、例えば、X,Y,Zを通る円を描くと、その円周上にはWが乗ってしまう。Y,Z,Wを通る円を描くと、その円周上にはXが乗ってしまう…、のように。

 以上を踏まえて解答してみましょう。

 異なる4点C,E,F,Dから3点選ぶ選び方は4C3=4通りですが、実際は4点C,E,F,Dを通る円は1個しかないので、これは3個分数えすぎ。4点A,E,D,Bに対しても同じことが言えるので、この問題の答えは16-(3+3)=10個となるのです。

 その10個の円がこちら!

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 赤い円が、4点が同一円周上に乗る円です。このように、複数の点が同一円周上に乗る状態の事を共円と言ったりします。

 さて、結局円の消滅トリックは図形の定理がカギでした。同一円周上にない3点の組合せは同じなのに、そこに角度(直角)の情報が加わったとたんに、組合せの計算だけでは解けなくなってしまう。こういう、ちょっと別の立場から問題を眺める視点が必要な問題、素敵だなぁと思います。

3垂線は1点で交わる

 せっかくなので、最後におまけ。

 問題Bの三角形は、2つの頂点A、Bからそれぞれ対辺に垂線を下ろし、その2本の垂線の交点をFとしていました。

 ここで、こんな問題が考えられます。

 頂点Cから対辺に垂線を下ろすと、その垂線は点Fを通りますか。別の言い方をすれば直線CFは対辺と垂直に交わりますか。

 この疑問に対する答えはYESです。次のような定理が知られています*2

三角形における垂心の存在三角形の3つの頂点から対辺に引いた3本の垂線は1点で交わる。この1点のことを三角形の垂心という。

  この定理を、問題Bで出てきた2つの赤い円を用いて証明してみましょう。

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  設定は問題Bと同じとします。

円周角の定理より ∠EFC=∠EDC …①

円に内接する四角形の性質より ∠BAE=∠EDC …②

①、②より ∠EFC=∠BAE これより四角形AGFEは円に内接する。

∠AEF=90°より、∠AGF=90° 

よって CG⊥AB

以上より、三角形の3つの垂線は一点で交わる。 (証明終)

 

 * * * * * * * * * * 

 

 図形問題の面白さ。それは見えないものを見抜く面白さなんですね。

 

 ということで、ここまでお読みいただいてありがとうございます。

 初めての記事、めちゃくちゃ時間がかかりました笑。ブログ初心者なので、至らない点も多かったと思いますが、これから精進していきます。よろしくお願いします!

*1:Wikipediaによるとサム・ロイド(Sam Loyd)は1841年生まれのアメリカのパズル作家。この記事を書くために色々調べたら、なんとこの人、あの15パズルの考案者なんですね。

*2:現在(2019年)は高校の数学A「図形の性質」で習います。